「山の恵みの映画たち2019」上映作品  『海の産屋 雄勝法印神楽』 被災と芸能が交叉する珠玉のドキュメンタリー

 

山形ドキュメンタリー映画祭のプレイベントとして、「やまがたの山語り 山の恵みの映画たち2019」が3月15日、16日、17日の3日間、山形で開催されます。そこで今回から5回にわたり、山形国際ドキュメンタリー映画祭プロジェクト・マネージャーの高橋卓也さんと私、LONG TRAIL HIKER 斉藤正史が上映される作品の中から5つの作品を選び紹介していきたいと思います。

第1回目は高橋さんに、上映作品の『海の産屋 雄勝法印神楽(うみのうぶや おがつほういんかぐら)』についてご紹介いただきました。

 

「やまがたの山語り 山の恵みの映画たち2019」 のテーマ

山と人との関わりをテーマとした映画を集めて、山に囲まれた山形で観てみたい!そんな思いで始まった特集上映「山の恵みの映画たち」は、隔年で開かれている山形国際ドキュメンタリー映画祭のプレイベントとして2014年、2016年とこれまで2度開催し、好評を博してきました。その中で改めて感じたのは、山は川や海ともつながる自然の源のようなものであり、その循環の中には人々の暮らしや知恵や思いが濃厚に息づいているということ。今回の企画では、そうした川の視点、海の視点も盛り込み、広く自然と人間を描いた作品を選んでみました。

 

被災と芸能が交叉する珠玉のドキュメンタリー 『海の産屋 雄勝法印神楽』 

(プロデューサー 手塚眞 三浦庸子/監督 北村皆雄 戸谷健吾/日本/2017/BD/77分)

自然は人々に豊かな恵みをもたらすとともに、ときに凶暴な顔を顕す。これは“二つの顔”をもつ海のものがたりです。
宮城県雄勝半島、石巻市の漁村は3.11東日本大震災の津波で46軒中、1戸だけを残し被災しました。ホタテや牡蠣やワカメの養殖が盛んな天然の漁場は、大津波によって一変。その絶望の淵から立ち上がったのは、村に残ることを決めた12人の漁師たちでした。

村には、およそ600年前に出羽三山の修験者が伝えたとされる法印神楽が今も村人によって継承されています。「いっさい、いっさい、海を恨んでいねぇ」と、男たちは生活の再建と同時に、祭りの復興に乗り出しました。流出した一切の神楽面と祭具を作り直し、何もなくなった立浜地区の海辺に柱を立て、神楽舞台を作ったのです。

神楽に憑かれて“好きの神”を自称する漁師たちが、祈りの神楽を舞い、笛と二人の太鼓打ちが息を合わせ、600年前と変わらぬリズムを打ちます。産屋の庭は神楽が舞い遊び、笛・太鼓の音が、国生みの混沌の中から命の誕生を告げる産声のように響きます。石巻や仙台、県外に避難して戻った人たちも、仮設住宅で暮らす人々も、祭りの神楽に元気づけられ、夢をふくらませてゆきます。
海辺に立てられた舞台、そこでの大トリは「産屋」という演目。それは新しい命を再生し、力強く鼓動させてくれる海の豊穣と時として凶器に変わる海の荒々しさの二つが、一つの神の中に同居していることを表わし伝えるものでした・・・。

この作品は、東日本大震災から1年後の雄勝法印神楽を通して、まさに、被災と芸能が交叉する姿をとらえた優れたドキュメンタリー映画であり、神楽の担い手である村人や漁師たちの、立ち上がる姿を描く人間ドラマでもあります。

自然に生かされ自然と共に生きてきた、生きようとする人間の根底にある思いが、被災という極限の状況の中で、生きた言葉で語られる凄さと安らぎ。そして人と祭りと自然、その強くしなやかな繋がりをあらためて見せてくれる傑作です。

 

(監督より) 東日本大震災の光景を見て、日本の神話にある国土が生成する前の混沌とした姿を思い浮かべた。震災から復興する雄勝神楽のドキュメンタリーを撮ることになって、始原の国造りの神話の話がほんとうであることにびっくりした。
この神楽には、ヒトもムラも、零から出発させ、生まれ清まらせる力があることに、思いっきり気づかされた。すごい神楽だ。

 

取材協力: 山形ドキュメンタリー映画祭プロジェクト・マネージャー 高橋 卓也

YIDFF 2019 プレ・イベント やまがたの山語り 山の恵みの映画たち 2019

『海の産屋 雄勝法印神楽』(うみのうぶや おがつほういんかぐら) 公式サイト

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